今回の発端は、SPWRで新登場した幻影霧剣。
そのテキストに違和感を覚えたので、すこし調べてみた。
2018年7月2日 追記
すごく今さらですが、遊戯王カードWiki「攻撃対象」の項にて、本稿で扱った事案が正しく訂正されていることを確認しました。
「攻撃対象にされない」効果と(直接攻撃可)
「攻撃対象に選択できない」または「攻撃対象にならない」(直接攻撃不可)
の2グループです。
2016年の4月ごろには訂正されていました。マジでいまさらですけど。よかったね。
この記事は、「かつてこのような問題があった」という記録としてお楽しみください。
細かい話をすると、Wikiにおいて後者は(ほとんどの場合直接攻撃不可)という歯切れの悪い分類になっています。なぜかというと、ゴーストリック系フィールド魔法の共通効果「裏側守備表示モンスターのみの場合直接攻撃できる」を範疇に含んでいるからです。
だけど、わざわざ地の文章で書かれていることなので簡単に理解できるテキストであり、「テキストから裁定を読み取るための分類」というテーマで一緒に扱うには不適切だと、相変わらず感じています。まあ、この記事で以前書いたように、前者のややこしいほうのグループも再録時に括弧で注釈が足されていること。そして遊戯王のテキストで地の文と注釈文にあまり差がないことを考えると、気にしすぎないほうがいいんでしょうね。
以下、当時の本文です。
■「攻撃対象にならない」と「攻撃対象に選択できない」の違い
今回の記事を書く上で、この2つの効果に違いがあることを説明しておく必要があるだろう。
(参考:遊戯王カードwiki「攻撃対象」)
攻撃されない代わりに、攻撃を止めることもできない、いないモノとして扱われてしまうグループだ。
DP16で伝説のフィッシャーマンが再録された際にも、テキストには以前と同じように「攻撃対象にされない」と記載されている。
例に挙げた地縛神のテキストには「攻撃対象に選択できない」と記載されている。
遊戯王には、この2種類の「攻撃されない」カードが存在していることを理解していただけただろうか。
■幻影霧剣のテキストに抱いた疑問
今回の記事を書くきっかけは幻影霧剣のテキストにある。
このカードを発売前に初めて見た時、テキスト赤字部分「攻撃対象にならず、(ならない)」の部分が引っかかった。
自分が覚えている限りでは、先述した2パターンのうち、前者なら「攻撃対象にされない」、後者なら「攻撃対象に選択できない」と書かれていた、と記憶していたからだ。
しかし・・・、
1:テキストに「攻撃対象にならない」と書かれているので、wikiでいう「攻撃対象にならないカード」のグループに含まれるだろうと思えた。
2:しかし実際のwikiでは「攻撃対象に選択できないカード」のグループとして記載されていた。
そもそも、「攻撃対象にならないカード」として挙げられているカードはすべて実際のテキストは「攻撃対象にされない」と記載されているので、このカテゴライズに疑問を感じる。
3:「攻撃対象にならない」というテキストは「攻撃対象にされない「攻撃対象に選択できない」のいずれとも異なるテキストにも関わらず、発売前情報段階ではっきりと後者にカテゴライズされていることに疑問を感じた。
と、以上のように次から次へと疑問が生まれていったのだ。
その時にはしっかりとまだ調べてはいなかったのだが、発売後の裁定でも正式に後者のカテゴリに含まれていることを確認した。(参考:公式DB「幻影霧剣」)
そして、一体このテキストのどの部分から、この差異を読み取ることができたのか、を調べることにした。
■変化していくテンプレート
遊戯王では、類型カードにも関わらず異なる効果処理を行う場合、そのわずかな違いをテキストによって見分けられることが多い。そこでまず、wikiの「攻撃対象」のページに記載されているそれぞれのカテゴリーのカードテキストを一通り確認することにした。
すると、ある興味深い事実を発見できた。
これらのカードはwikiにおいて「攻撃対象に選択できない」グループに分類されているカードだが、そのテキストはそれぞれ異なっている。
これは、今までテキストの差異から効果処理の差を見分けてきた筆者にとって中々に衝撃的な事実だった。
「同じテキストなのに違う処理をする」なんて揶揄されることもある遊戯王だが、これらの例はその逆を行く「違うテキストだが同じ処理をする」カードの存在を示していた。
衝撃的だった一方で、今回の疑問を解消する糸口も見つかった。
1つは、ラーのテキストが今回の幻影霧剣と同じ、「攻撃対象にならない」というテンプレートで書かれていたため、発売前時点でもその部分で「攻撃対象に選択できないグループ」だと判断できたのだろうということ。
もう1つは、これらテキストを見比べているうちに、同じテンプレートで書かれているカード同士は発売時期も近かったことだ。
これはすなわち、時代を経ていくにつれて、カード効果のテンプレートが変化していっている可能性を示していた。
と、いうわけで、これらカードを全て、そのテンプレート別に分類してみた。
(括弧内は初登場した商品の発売日)
テンプレート別に分けただけで、見事な年表が出来上がってしまった。
間違いなく、この効果のテンプレートが変化していることが読み取れる。
「攻撃対象にできない」と「攻撃対象にならない」は自分視点か相手視点かの主体が変わっているだけで同じテキストとみなせるかもしれない。もしくは、9期に入ってから主体が相手から自分へと変化したのかもしれない。
さらにここに、「攻撃対象にならない」グループも加えてみよう。
このあまり感覚的でなく、理解しにくい効果が以後10年以上印刷されておらず、「攻撃対象に選択されない」に役割を奪われたことがわかる。
wikiでは、のちに発売されたゴーストリックのフィールド魔法もこの分類に含まれているが、直接攻撃できることが地の文章で書かれているので、同一視しにくい。
伝説のフィッシャーマンがDP16で再録された際にも括弧つきの注釈文で直接攻撃可能なことが補足されていた。
■現状のwikiでの分類における問題点
さて、ここまで調べ、攻撃対象に関する効果のテンプレートが時代と共に変化していったことがわかった。
そして、今度はwikiにおける分類が、現状に合っていない、古いテンプレートのままであるように思えてきた。
そもそも、テキストには「攻撃対象にされない」と記載されているカードが「攻撃対象にならないカード」というカテゴリ名なのもおかしかった。
そしてここにきて、「攻撃対象に選択できないカード」は、「攻撃することができない」を元祖とし、そこからいくつかの変遷を経て「攻撃対象にならない」というテンプレートにまで変化してしまった。
現状でのテキストテンプレートを元にカテゴリ名を改めてつけるのなら、前者を「攻撃対象にされないカード」とし、後者こそを「攻撃対象にならないカード」と呼ばなければならない。
とはいえ、今までwikiにおいて前者の意味で用いられてきた「攻撃対象にならないカード」を、後者に置き換えてしまうというのは乱暴で、混乱を招くのは必至だ。
しかしせめて、前者を正しく「攻撃対象にされないカード」と呼称することから始めることは可能であり、ぜひそうすべきだ。
そして然るべきのちに、後者のカテゴリ名も変えていくべきだろう。
もっとも、その頃にはまた新たなテキストへと変化しているかもしれないが。
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遊戯王とゼクスを中心に、カード関係の話題なら何でも頭を突っ込みます。
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すごく今さらですが、遊戯王カードWiki「攻撃対象」の項にて、本稿で扱った事案が正しく訂正されていることを確認しました。
「攻撃対象にされない」効果と(直接攻撃可)
「攻撃対象に選択できない」または「攻撃対象にならない」(直接攻撃不可)
の2グループです。
2016年の4月ごろには訂正されていました。マジでいまさらですけど。よかったね。
この記事は、「かつてこのような問題があった」という記録としてお楽しみください。
細かい話をすると、Wikiにおいて後者は(ほとんどの場合直接攻撃不可)という歯切れの悪い分類になっています。なぜかというと、ゴーストリック系フィールド魔法の共通効果「裏側守備表示モンスターのみの場合直接攻撃できる」を範疇に含んでいるからです。
だけど、わざわざ地の文章で書かれていることなので簡単に理解できるテキストであり、「テキストから裁定を読み取るための分類」というテーマで一緒に扱うには不適切だと、相変わらず感じています。まあ、この記事で以前書いたように、前者のややこしいほうのグループも再録時に括弧で注釈が足されていること。そして遊戯王のテキストで地の文と注釈文にあまり差がないことを考えると、気にしすぎないほうがいいんでしょうね。
以下、当時の本文です。
■「攻撃対象にならない」と「攻撃対象に選択できない」の違い
今回の記事を書く上で、この2つの効果に違いがあることを説明しておく必要があるだろう。
(参考:遊戯王カードwiki「攻撃対象」)
「攻撃対象にならないカード」遊戯王カードwikiにおいて、「攻撃対象にならないカード」として分類されているカードは、このカードのみがプレイヤーのモンスターゾーンに存在する場合、そのコントローラーを直接攻撃することが可能になっている。
例:ガーディアン・ケースト、伝説のフィッシャーマン
(遊戯王カードwikiより引用)
攻撃されない代わりに、攻撃を止めることもできない、いないモノとして扱われてしまうグループだ。
DP16で伝説のフィッシャーマンが再録された際にも、テキストには以前と同じように「攻撃対象にされない」と記載されている。
「攻撃対象に選択できないカード」同じwikiにおいて「攻撃対象に選択できないカード」として分類されているこちらのグループは、単体でフィールドに存在している場合でもプレイヤーを直接攻撃することが出来ない。
例:地縛神シリーズ
(遊戯王カードwikiより引用)
例に挙げた地縛神のテキストには「攻撃対象に選択できない」と記載されている。
遊戯王には、この2種類の「攻撃されない」カードが存在していることを理解していただけただろうか。
■幻影霧剣のテキストに抱いた疑問
今回の記事を書くきっかけは幻影霧剣のテキストにある。
《幻影霧剣》 永続罠
フィールド上の効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
「幻影霧剣」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターは攻撃できず、攻撃対象にならず、効果は無効化される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。
(2):省略
このカードを発売前に初めて見た時、テキスト赤字部分「攻撃対象にならず、(ならない)」の部分が引っかかった。
自分が覚えている限りでは、先述した2パターンのうち、前者なら「攻撃対象にされない」、後者なら「攻撃対象に選択できない」と書かれていた、と記憶していたからだ。
しかし・・・、
1:テキストに「攻撃対象にならない」と書かれているので、wikiでいう「攻撃対象にならないカード」のグループに含まれるだろうと思えた。
2:しかし実際のwikiでは「攻撃対象に選択できないカード」のグループとして記載されていた。
そもそも、「攻撃対象にならないカード」として挙げられているカードはすべて実際のテキストは「攻撃対象にされない」と記載されているので、このカテゴライズに疑問を感じる。
3:「攻撃対象にならない」というテキストは「攻撃対象にされない「攻撃対象に選択できない」のいずれとも異なるテキストにも関わらず、発売前情報段階ではっきりと後者にカテゴライズされていることに疑問を感じた。
と、以上のように次から次へと疑問が生まれていったのだ。
その時にはしっかりとまだ調べてはいなかったのだが、発売後の裁定でも正式に後者のカテゴリに含まれていることを確認した。(参考:公式DB「幻影霧剣」)
そして、一体このテキストのどの部分から、この差異を読み取ることができたのか、を調べることにした。
■変化していくテンプレート
遊戯王では、類型カードにも関わらず異なる効果処理を行う場合、そのわずかな違いをテキストによって見分けられることが多い。そこでまず、wikiの「攻撃対象」のページに記載されているそれぞれのカテゴリーのカードテキストを一通り確認することにした。
すると、ある興味深い事実を発見できた。
地縛神共通効果
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
《アーティファクト・アキレウス》
相手ターン中にこのカードが特殊召喚に成功した場合、このターン相手は自分フィールド上の「アーティファクト」と名のつくモンスターを攻撃対象にできない。
《ラーの翼神竜 -球体形-》
(1):このカードは攻撃できず、相手の攻撃、効果の対象にならない。
《ヒーロー・ヘイロー》
発動後このカードは装備カードとなり、攻撃力1500以下の戦士族モンスターに装備する。
相手の攻撃力1900以上のモンスターは、装備モンスターを攻撃することができない。
これらのカードはwikiにおいて「攻撃対象に選択できない」グループに分類されているカードだが、そのテキストはそれぞれ異なっている。
これは、今までテキストの差異から効果処理の差を見分けてきた筆者にとって中々に衝撃的な事実だった。
「同じテキストなのに違う処理をする」なんて揶揄されることもある遊戯王だが、これらの例はその逆を行く「違うテキストだが同じ処理をする」カードの存在を示していた。
衝撃的だった一方で、今回の疑問を解消する糸口も見つかった。
1つは、ラーのテキストが今回の幻影霧剣と同じ、「攻撃対象にならない」というテンプレートで書かれていたため、発売前時点でもその部分で「攻撃対象に選択できないグループ」だと判断できたのだろうということ。
もう1つは、これらテキストを見比べているうちに、同じテンプレートで書かれているカード同士は発売時期も近かったことだ。
これはすなわち、時代を経ていくにつれて、カード効果のテンプレートが変化していっている可能性を示していた。
と、いうわけで、これらカードを全て、そのテンプレート別に分類してみた。
(括弧内は初登場した商品の発売日)
「攻撃することができない」
○ヒーロー・ヘイロー(2005年10月13日)
「攻撃対象に選択できない」
○氷結界の風水師(2008年12月4日)
○地縛神シリーズ(2009年2月14日)
○レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト(2009年7月1日)
○ マジオシャレオン(2010年11月13日)
「攻撃対象にできない」
○ハーピィズペット幻竜(2013年2月16日)
○No.82 ハートランドラコ(2014年12月21日※ジャンプフェスタでの先行販売)
○アーティファクト・アキレウス(2014年2月15日)
「攻撃対象にならない」
○ラーの翼神竜 -球体形-(2015年6月6日)
○幻影霧剣(2015年11月14日)
テンプレート別に分けただけで、見事な年表が出来上がってしまった。
間違いなく、この効果のテンプレートが変化していることが読み取れる。
「攻撃対象にできない」と「攻撃対象にならない」は自分視点か相手視点かの主体が変わっているだけで同じテキストとみなせるかもしれない。もしくは、9期に入ってから主体が相手から自分へと変化したのかもしれない。
さらにここに、「攻撃対象にならない」グループも加えてみよう。
「攻撃対象にされない」一気に年表の先頭に立ってしまった。
○伝説のフィッシャーマン(2000年12月14日)
○ガーディアン・ケースト(2002年11月21日)
このあまり感覚的でなく、理解しにくい効果が以後10年以上印刷されておらず、「攻撃対象に選択されない」に役割を奪われたことがわかる。
wikiでは、のちに発売されたゴーストリックのフィールド魔法もこの分類に含まれているが、直接攻撃できることが地の文章で書かれているので、同一視しにくい。
伝説のフィッシャーマンがDP16で再録された際にも括弧つきの注釈文で直接攻撃可能なことが補足されていた。
■現状のwikiでの分類における問題点
さて、ここまで調べ、攻撃対象に関する効果のテンプレートが時代と共に変化していったことがわかった。
そして、今度はwikiにおける分類が、現状に合っていない、古いテンプレートのままであるように思えてきた。
そもそも、テキストには「攻撃対象にされない」と記載されているカードが「攻撃対象にならないカード」というカテゴリ名なのもおかしかった。
そしてここにきて、「攻撃対象に選択できないカード」は、「攻撃することができない」を元祖とし、そこからいくつかの変遷を経て「攻撃対象にならない」というテンプレートにまで変化してしまった。
現状でのテキストテンプレートを元にカテゴリ名を改めてつけるのなら、前者を「攻撃対象にされないカード」とし、後者こそを「攻撃対象にならないカード」と呼ばなければならない。
とはいえ、今までwikiにおいて前者の意味で用いられてきた「攻撃対象にならないカード」を、後者に置き換えてしまうというのは乱暴で、混乱を招くのは必至だ。
しかしせめて、前者を正しく「攻撃対象にされないカード」と呼称することから始めることは可能であり、ぜひそうすべきだ。
そして然るべきのちに、後者のカテゴリ名も変えていくべきだろう。
もっとも、その頃にはまた新たなテキストへと変化しているかもしれないが。
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名古屋でカードしてるカードショップ店員。
遊戯王とゼクスを中心に、カード関係の話題なら何でも頭を突っ込みます。
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