だいす
カードゲームで対戦する時、特にマッチ戦を行うゲームで広く採用されているルール「負け先」。
先手が有利だとよく言われるカードゲームにおいて、負けたほうが次のゲームの先手をもらうってのは、一見フェアで合理的に見える。だけど、それって本当に、フェアで、合理的なの?

 

◆将棋に「負け先」はないらしい
 
のっけからカード関係ない話で恐縮ですが、今(5月29日現在)、名古屋の大須万松寺にて将棋の名人戦第五局が行われてます。1局の対決に各9時間もの持ち時間が与えられた2日がかりの大勝負です。
普段長くても30分から50分程度で決着がつくカードゲームのプレイヤーからすると、途方もない長い勝負だと感じます。しかもこれを最大七番勝負でやりあうわけですから、想像するだけでお腹と頭が痛くなります。マジ無理。

さて、そんな名人戦七番勝負ですが、これまでの4局はすべて先手番が勝利しているそうです。
そう聞いて、カードゲーマーである僕が最初に思い浮かんだのは「将棋も負け先なんかな?」ってことでした。
負け先。先のゲームで負けたプレイヤーが次のゲームで先手を得ること。強制で先手だったり単に手番を選べるだけだったりゲームによってまちまちですが、マッチ戦を採用しているゲームではポピュラーな方式です。
そして、往々にして先手が有利なことが多いカードゲームでは、○×○という風にすべてのゲームで先手のプレイヤーが勝利し、結果的に最初のゲームで先手を取ったプレイヤーがそのままマッチでも勝利する、というのもよくある光景です。
なので、「将棋も負け先なんかな?」と、思ったわけです。ここまでの勝負、負けた側の棋士が先手の利をもってやり返す展開の応酬なのかな、と。
でも実際には、毎回振り駒で手番を決めなおしてるようです。2005年からこのルールだそうです。
参考:振り駒(ウィキペディア)

◆「負け先」は本当にフェアなのか

さて、ここからが本題です。
先手が有利だという前提において、「負け先」ルールを導入することは果たして正しいことなのか。
本当にフェアな勝負ができるルールなのかってことです。

現状負けていて、不利な側のプレイヤーが次のゲームで有利な先手を享受できる。一見、とても公平に見えるルールです。
ですが、次のゲームでは次の敗者が、つまり最初のゲームの勝者が再び先手を獲得します。そして、そのままマッチに勝利し、○×○という見慣れたゲーム結果が誕生します。

「負け先」方式が抱えている問題点はずばり、最初のゲームで先手を獲得したプレイヤーが有利になりやすいことです。(あくまでも「先手が有利なゲームでは」という前提です。)
先手の利を活かして勝つことができれば、その後に一度負けても王手をかけた状態で先手を取ることができるわけです。

「勝った側のプレイヤーが有利になって何が悪い」
もっともな意見ですが、そもそもなぜ勝てたのでしょうか。先手を取れたからではないのでしょうか。
ゲームが始まる前に行われる、たった一度のランダムな手番決定によって。その後の勝負の行方がある程度決定付けられてしまうわけです。(繰り返しますが、あくまで「先手が有利なゲームでは」という前提です。)

たとえば、これを将棋と同じように、ゲームごとに手番を決めなおす方式にしてみましょう。
1-1に持ち込んだ最後のゲームで「でも後手かぁ・・・・・・」と気落ちすることはなくなるでしょう。このダイスに勝って先手をもぎ取れば、勝利はもう目前です!

その代わり、2ゲーム連続で先手を取られて、枕を濡らす日もあるかもしれません。でも、それって「負け先」の時の2ゲーム目を省いて1ゲーム目と3ゲーム目だけやったのと同じことじゃないですか。「お情け」で頂いた先手のゲームだけ勝っていても、結局相手が2回勝てば結果は同じなんですよ。

「負けた側が確実に1回しか先手ができないルール」よりは、「もしかするとこの後2回先手をできるかも知れないルール」の方が、より公平、フェアなルールだと言えるのではないでしょうか。

また、毎回手番を決めなおすということは、じゃんけんなりダイスなりを毎回やり直すということです。単純に試行回数が2倍から3倍増えるので、その結果がより50%に近いところへ収束することも期待できます。5回戦やって全部後手になっちゃうような人でも、5回戦15ゲームで毎回手番を決めなおせばもうちょっとマシな確率で先手が取れるかもって、思いません?

◆そうは言っても毎回先手が勝つわけじゃないし

まあ、実際のところは毎回先手が勝つわけじゃないんですけどね!カードゲームはすごいから!素晴らしいゲームだから!ゆえに先手後手くらいでガタガタにはならんのですよ!

だけど、その素晴らしさゆえに、この「負け先」の問題点が見えにくくなってた部分は間違いなくあると思います。見た目に問題がないからといって、現状のルールに問題がないとは限らないわけですよ。
「強い人なら後手でも勝てるよ」とか、実力の問題にすりかえられちゃったりとかね。

ともかく、今まで当たり前に使ってきた「負け先」は、実は結構問題がある、アンフェアなルールなんじゃないかな?という話でした。今すぐやめろ!廃止だ!っとは言わないけど、一考の余地がある問題なんじゃないかな。

おわり



プロフィール

HN:はったー
名古屋でカードしてるカードショップ店員。
遊戯王とゼクスを中心に、カード関係の話題なら何でも頭を突っ込みます。

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